先日、実家を訪ねた時に、BSで12回シリーズの『ハーバード白熱教室』を見ました。正義について考えるという内容で、その回は、自分と同じ寮にいる学生がカンニングをしているのを見つけたら、それを通報するかどうかというような話をマイケル・サンデル教授が学生に投げかけていました。学生に身近な例を持ち出して、そこで正義について考えさせるとても面白いクラスです。学生たちが、日本の大講義室どころではない巨大な教室であるにもかかわらず、正義とは何かについて自らの意見を論理立ててどうどうと述べる姿に感動しました。

ハーバードということで、その質の高さはあるかもしれませんが、こうした授業スタイルは、アメリカでは当たり前でした。先日、上映に行った大学のアメリカ人の先生のクラスでも、日本人の学生が良い質問をいきいきと尋ねてくれたのを思い出します。日本人だって、そのような教育、環境を与えられれば、当然できるようになるのです。この番組が日本の教育を再考するきっかけになればと思いました。また、異なった意見を口にする事は悪ではないということも実感してもらえればと考えます。前置きが長くなりましたが、この番組を見て、紺野さんの「住んでいるところに尽くすのが本当で、国がなくなってしまえば、人類に尽くすでいいと思う。そういう時代にならなければいけない」という言葉です。

紺野さんは、個人の命よりなによりも国が優先すると考えられた時代に育てられました。しかし、ブラジル移民として生きていく中、様々な体験を経て、異なった正義を考えるようになりました。紺野さんは、結局、日本人ではあっても、自分の住んでいる所を大切にして生きていくのが順当だと考えるようになります。そして、まだまだ国というものが重要な役割を果たしているが、今後、紆余曲折はありながらも、世界がもっとつながっていき、人類のために尽くす時代が来るだろうとおっしゃっているのです。

自分の国、自分の住んでいる所だけの利益を考えるのではなく、すべての人々を対象としたより包摂的な正義というものが考えられる世の中になるというわけです。紺野さんがこの白熱教室に登場したら、ハーバードの学生はどんな風に反応しただろうかと、想像してみたくなります。

これまでの上映会でも、最近の上映会でも若い人たちがみな紺野さんがすばらしいという感想を持ってくれました。そして、「人類のために尽くす」という言葉に共感しています。日本の社会でもこういった意識がもっと広がり、自分の、自分の地域の、自分の組織の既得権益を守ることにきゅうきゅうとするのではなく、もっと包摂的に正義を考えられるようになれば、この社会の停滞がずいぶん改善されるだろうと思います。上映を通して、紺野さんの正義についての考えも伝えていきたいです。