不況まっただ中の日本から、出稼ぎのつもりで単身ブラジルに渡って73年。言葉もわからない土地で、10回も職業を変え、破産の憂き目にもあった。だが、諦めずに努力した甲斐あって、今ではサンパウロで悠々自適の暮らしをしている。

しかし、紺野堅一さんは家にじっとしているご隠居さんではない。紺野さんは、毎年日本にやってくる。それは日本にデカセギに来ているブラジル人たちを訪ねるためだ。日本在住のブラジル人の数は現在31万人を超え、増加と滞在長期化傾向にある。彼らの姿が、出稼ぎのはずがブラジルに定住するはめになった自身の体験と重なる。彼らの将来はいったいどうなるのか。子供たちの教育の現状はどうか。若い世代の仕事の苦労話に耳を傾け、子供たちに勉強の様子を尋ねる。先生たちと懇談するため学校へも出かけていく。

そして、この旅は彼自身の人生を振り返る旅でもあった。「大日本帝国臣民」として、それともブラジル人として人生を終わるのか。レイルパス片手に新幹線、ローカル線、バスと乗り継ぎ、自分の足で歩きながら考える。

うんと前からグローバルに生きてきたおじいちゃんのくれるアドバイスは? また、旅の末に、彼のたどり着いたアイデンティティとは?


ドキュメンタリー/2008年/日本/日本語・ポルトガル語/字幕:日本語・ポルトガル語/59分/カラー/ミニDV