サンパウロでの上映会に紺野さんがお出で下さったことはすでに書きました。黒でびしっと決めて、杖をついた紺野さんが壇上に上がられると、客席から拍手が。ご紹介した後、一言、お話いただきました。

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上映後、来場者と話す紺野さん。黒できめています。
後ろにいるのは、孫のアナルシアさん。


移民とはどういうことか、いろいろな人にも話を聞き、考えてきました。その結果、より良い生活を求める事、さらに子孫が幸せになる事であるという結論に行き着きました。そして、「ブラジルに来て良かった」と思う人は、みな成功者である。そして、後は、皆さんご自身にゆだねます。

という内容のお話でした。終わった途端に会場からまたどっと拍手がわき起こりました。

様々な困難に直面しながらも、自分の人生を生きてきたという自信に満ちた言葉に、私も胸が熱くなりました。戦前の、お国のために自分の命すら捧げなければならないという教育を受けた紺野さんがこんなにも自分自身から発する考え方に至るには、よほど大変な道筋があったに違いないとも。でも、私も含めて、今の日本で、どれだけの人が自分の人生を自分で肯定的に判断できる人がいるだろうか。

一歩一歩自分の足で踏みしめて生きてきた紺野さんの姿をさらに深く胸に刻みこみ、人生の糧にしたいと思った次第です。

上映会の後、紺野さんとお話しした際に、「移民百周年と言っても、お祭り騒ぎになってしまい、移民本人にその意義を尋ねる人など、ほとんどいない。皆より良い生活を求めてブラジルに渡ったのであって、誰も日伯交流のために移民した人などいない。」と語られました。移民というのは、国と国との関係ではなく、あくまでも個人のものであるという視点を貫いている紺野さんでした。