戦後70年近くの時を経て光があてられたブラジルの日系移民社会の衝撃的な真実

ブラジル映画『汚れた心』をようやく昨日、大阪で見てきました。第二次戦後にブラジルの日系人社会で起こった勝ち組、負け組を扱った映画です。

勝ち組、負け組とは、戦後も日本が戦争に負けたことを認めない一部の日本人が、事実を主張する同胞を「国賊」呼ばわりして、多数を殺傷したという恐ろしい事件のことです。紺野さんからもこの事件について聞き及んでいましたので、この難しい題材をどのように描いているか、とても興味がありました。

敵国となった日本人は様々な制約を受け、集会の自由が規制され、日本語教育が禁止され、隠れて日本語教室を開く様子が描かれています。一方でポルトガル語を学ぼうとしない頑な移民たちの姿も。慶応大学の保存する多数の移民に関する資料を参考にするなど、十分な調査を経て、制作されたとのことで、彼らの姿は現実味を帯びています。狂信的軍人、彼に刀を渡され、殺人を繰り返す若い移民が視覚化され、とても強烈でした。ブラジルの片田舎にいながら、日本国内にいる以上に国家主義に傾いていた人たちの悲しい姿です。

しかし、一方で、どうしてこういった心を彼らが持つようになったのかという疑問には、この映画は十分には答えていませんでした。また、刀を振り回したり、執拗に刺したりの場面が多く、辟易しました。

「日本の恥」とされる事件なので、日本国内では語られる事はほとんどありませんが、孤立した少数の日本人の集団が、大きな敵ではなく、少数派を正義の名の元に、排除、殺戮するというのは、連合赤軍事件の時にも起こったことです。昨今、大いに問題になっているいじめとも関連がありそうです。関連の書籍等、読んでみたくなりました。

ヴィセンテ・アモリン監督のメッセージには、日系人から「ガイジンでなければ語れない」と言われたと記していますが、いつか日本人、日系人の手によってこの問題を彼らの心の深い襞をも含めて描いてもらいたいものです。