この間、出会うブラジル人の子供たちや若い人たちについて強く印象づけられたことは、彼らの持つ人間力とでも言うべきものです。日頃、多文化共生等の議論の中でも、支援の対象とされがちですが、彼らとつきあってみると、大人の私が見習いたいと思うような自然に人と関われる力が備わっています。

以前、ブラジル人学校をお尋ねした時に、小学校3年生の子供たちに紹介されましたが、先生が私に質問をしてご覧というと、素直にいろいろな質問を投げかけてきました。お菓子を持っている子は、どうぞと私にすすめてくれましたし、漫画本を持っている子は、どちらか好きな方をあげると言ってくるのです。また、上の年齢の子供たちが自然と小さな子供たちの世話をやいています。今の日本の子がここまで上手に人と関われるかなと思い、とてもびっくりしました。

私がもらった漫画本は、シコ・ベントというブラジルの子供たち誰もが知っているようなキャラクターの漫画です。田舎に住む少年シコ・ベントのお話で、どれも素朴で道徳的なメッセージがこめられています。私の好きなのは、シコ・ベントが傷ついた小鳥を家に連れて帰って介抱してやります。猫がつけ狙ったりするのを追い払ったり、大切にします。ある日、小鳥は元気になって、空に飛び立って行きます。シコ・ベントはそれをちょっと悲しく思いますが、振り返らずに家に帰ろうとします。ところが、大雨に降られて風邪を引き、寝込んでしまいます。すると、窓辺に例の小鳥がやってきて、シコ・ベントの為に美しい声で歌を奏でるというお話です。たわいもないお話ですが、さまざまな教訓が埋め込まれています。日本の子供たちの読んでいる漫画やゲームといかに違っていることでしょうか。

最近、ブラジル人の子供たちが持っている人間としての力に注目しています。日本人の子供たちや大人が彼らから学べることがたくさんあるように思います。