映画を初日に見てくださった村田憲司さんから以下のような感想が寄せられました。

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映画、とてもよかったです。いいおじいちゃんですね。栗原さんが、どうしてこの人を撮ろうと思われたのか、よくわかりました。昔はこんな「賢い老人」が町内に一人はいましたね。子どもたちも、親たちも、おかげで安心して暮らせたものです。高学歴の老人はずいぶん増えたはずなのに、なぜか紺野さんのような慎ましやかな賢者は少なくなってしまいました。残念です。

広島のブラジル人一家と学校の場面、好きです。さわやかでやさしい風が吹いていました。ほんとうの「後見人」とは、こうした人間の在り方をいうのですね。老人には、ただそばにいてくれるだけで、みんなを幸せな気分にしてくれる力があるのですね。不思議な力です。私もできれば、そのような力を持ちたいと思いました。

未曾有の不況ですから、ブラジルから出稼ぎに来ている人たちにも、大きなしわ寄せが及んでいることでしょう。この映画を一人でも多くの人たちに見てもらうことで、「外国人労働者」や「雇用」「貧困」の問題への想像力も喚起できるに違いありません。

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村田さんがおっしゃるように、紺野さんには不思議な力があります。厳しい試練を生き抜いてきた紺野さんは、長い間の風雪を耐えてきた古木のようだと感じる時があります。子供たちがその下で遊んだり、暑い時には、人々が涼をとったり、雨露をしのいだり。なによりも、そのかたわらにいるだけで、ほっとします。

ただ古いだけではない。静かながら、そこには、ものすごい生命力が宿っています。それも、まっすぐな天に伸びる生命力です。つつましやかで静かなものこそ、本当の強さを宿しているのでしょうか。

私は、幸運にも、今回、映画を作りながら、そのエネルギーをたくさんいただきました。映画を通して、皆さんにも紺野さんのエネルギーを受け取っていただきたいと思っています。

また、現在、ブラジル人をはじめとする外国人労働者、そして日本人の非正規雇用の労働者たち、また中小の企業を経営している人たちが陥っている厳しい状況について、映画を見た人たちが思いを寄せ、それぞれが何らかの形でその思いを表現していっていただければと願っています。